介護離職防止の基礎知識⑥住みやすい自宅の環境
介護離職者を減らすためには、介護の負担軽減が必要不可欠
介護への負担を軽減することで、仕事への時間を確保でき、介護離職者の減少につながります。
介護の負担軽減のためには
A 上手な介護サービスの活用
B 介護休業など制度の活用
の2つを行っていくことが、介護離職者減少につながると考えています。
基礎知識②~⑤では、介護サービスを活用するために、介護保険の概要を説明しました。
基礎知識⑥では、自宅での介護軽減の手助けとなる介護サービスを紹介します。
A上手な介護サービスの活用
自宅の環境整備が介護負担減への近道
自宅で介護をしていると、不便を感じることがたくさんあると思います。
そのために、介護にかける時間が多くなってしまいます。自宅の環境整備をすることで、介護への負担を軽減することができます。
自宅の介護で予想される問題点・その解決法を紹介します。
場所 | 問題点 | 解決例 |
---|---|---|
玄関 | 玄関の段差が上がりづらい | 段差の半分の高さの踏み台を設置する。 |
靴の脱着時の姿勢が不安定 | 手すりを設置する。 | |
玄関に椅子を置く。 | ||
玄関のベルが高音で聞こえない | 低音のもの、またはランプが光るものに取り替える。 | |
車いすが引っかかる | スロープを設置する。 | |
廊下 階段 |
廊下、階段の移動が不安 | 手すりを設置する。 |
階段の上面に滑り止めを貼る。 | ||
階段昇降機を設置する。 | ||
段差がわかりづらい | 足元を照らす照明を設置する。 | |
段差解消スロープを設置する。 | ||
トイレ 洗面脱衣室 |
和式便器が使いづらい | 腰掛便座または洋便器へ取り替える。 |
冬場が寒い | 窓のすきまをふさぐ。カーテンなどで仕切る。 | |
暖房器具・暖房便座を設置する。 | ||
手すりがなく、不安定 | 手すりを設置する。 | |
浴室 | 入浴時に滑らないかと不安 | 滑りにくく、冷たくない床にする。 |
滑り止めマットを敷いておく。 | ||
1人で浴槽をまたぐのが怖い | 取り付け型の簡易手すりを設置する。 | |
一度座てから浴槽に入るための移乗用パスポードを設置する。 | ||
浴室の中が寒い | 暖房器具の設置する。 | |
入浴時のみシャワーを出し放しする。 | ||
居室 | 夜中の卜イレへの移動が難しい | 寝室、廊下、卜イレに足元を照らす照明を設置する。 |
夜のみべッドサイドのポータブル卜イレを使用する。 | ||
扉が開閉しに<い | 引戸に取り替える。 | |
取っ手を開きやすいフックに取り替える。 | ||
室内の暑さに気づかず、脱水症状を 起こしてしまう | 温度計にしるしをつけ、それ以上になったらクーラーを入れお茶を飲むように決めておく。 | |
和室への段差が怖い | 足元を照らす照明を設置する。 | |
段差解消ス□一プを設置する。 | ||
キッチン | 鍋を火にかけたまま忘れてしまう | 煙感知器、火災報知器を設置する。 |
自動消火機能のコンロにする。 | ||
立ち仕事が疲れる | いすに座って行う。 |
もう一度自宅を見てみてください。
小さな工夫が、介護への時間の短縮につながります。ですが、取り入れたくても金銭面を考えると、躊躇してしまう方もたくさんいると思います。
そこで、介護保険サービスが活用できる住宅改修や福祉用具などを紹介します。
①「大規模工事を伴わない住宅改修」
同一住宅あたりの費用の上限を20万として、そのうちの1~2割が自己負担となります。
・手すりの取り付け
・段差の解消
・滑りの防止、移動がスムーズになるなどのための床、通路の材料の変更
・引き戸などへの扉の取り替え
・洋式便器などへの便器の取り替え
②「福祉道具の貸与」
車いすや付属品、介護用ベッド(特殊寝台)、歩行補助杖などは福祉用具貸与を受けることができます。
種目 | 機能または構造等 | サービス対象者 |
---|---|---|
車いす |
自走用標準型車いす 普通型電動車いす 介助用標準車いす |
要介護2以上 |
車いす付属品 | クッション、電動補助装置など、車椅子と一体的に使用されるもの | 要介護2以上 |
特殊寝台 |
サイドレール取付可能なもので、次のいずれかの機能を有するもの ・背部または脚部の傾斜角度が調整できるもの ・床板の高さが無段階に調整できる機能 |
要介護2以上 |
特殊寝台付属品 | マットレス、サイドレールなどであって、特殊寝台と一体化に使用されるもの | 要介護2以上 |
床ずれ防止用品 |
次のいずれかに該当するもの。 ・送風装置または空気圧調整装置を備えた空気マット ・水などによって減圧による体圧分散効果をもつ全身用のマット |
要介護2以上 |
体位変換器 | 空気パッドなどを身体の下に挿入することにより、体位を容易に変換できる機能をもつもの。 | 要介護2以上 |
手すり | 取付に際し工事を伴わないもの | 全て |
スロープ | 段差解消のためのもので、取付に際して工事を伴わないもの | 全て |
歩行器 | 歩行が困難な者の歩行機能を補う機能をもち、移動時に体重を支える構造にあって、つぎのいずれかに該当するもの。 | 全て |
歩行器 | 歩行が困難な者の歩行機能を補う機能をもち、移動時に体重を支える構造にあって、つぎのいずれかに該当するもの。 | 全て |
歩行器 |
歩行が困難な者の歩行機能を補う機能をもち、移動時に体重を支える構造にあって、つぎのいずれかに該当するもの。 ・車輪があるものの場合、身体の前および左右を囲む把手などがあるもの ・四脚のものの場合、手腕で保持して移動させることが可能なもの。 |
全て |
歩行補助つえ | 松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフトトランド・クラッチ、プラットホーム・クラッチ及び多点杖 | 全て |
認知症老人 排徊感知機器 |
認知症老人が屋外へ出ようとしたときなど、センサーにより感知し、家族、隣人などへの通報するもの | 要介護2以上 |
移動用リフト (つり具の部分を除く) |
床走行式、固定式または据置式で、身仕をつり上げ、または体重を支える構造のもの。その構造により、自力での移動が困難な者の移勤を補助する機能があるもの(取付けに住宅改修が必要なものを除く) | 要介護2以上 |
自動排泄処理装置 | 尿・便が自動的に吸引され、尿や便の経路となる部分を分割することが可能な構造のもの。居宅要介理者等やその介護を行う者が容易に使用できるもの。 |
排便機能を有するものは要介護4・5のみ それ以外は全て |
③「貸与などの福祉用具関連サービス」
衛生面などで購入が適しているポータブルトイレや入浴用の椅子等は、特定福祉用具販売対象用品として、購入補助を受けることができます。費用上限は一年間で10万円とし、そのうちの1~2割が自己負担となります。
種目 | 機能または構造等 |
---|---|
腰掛便座 |
・和式便座の上に置いて腰掛式に変換するもの (腰掛式に交換する場合に高さを補うものを含む) ・洋式便座の上に置いて高さを補うもの 電動式またはスプリング式に便座から立ち上がる際に補助できる機能を有しているもの。 ・便座、バケツなどからなり、移動可能である便座(水洗機能を有する便器を含み、居室において利用可能であるものに限る)ただし、設置に要する費用については保険給付の対象とならない。 |
自動排泄処理装置 の交換可能部品 |
尿または便が自動的に吸引されるもので居宅要介護者などまたはその介護を行う者が容易に使用できるもの。 |
入浴補助用具 |
入浴に際しての座位の保持、浴槽への出入りなどの補助を目的にとする用具。 次のいずれかに該当するもの。 1 入浴用椅子 2 入浴台 3 浴槽用手すり 4 浴室内すのこ 5 浴槽内椅子 6 浴槽内すのこ 7 入浴用介助ベルト |
簡易浴槽 | 空気式または折りたたみ式などで容易に移動できるものであって、取水または排水のために工事を伴わないもの。 |
移動用リフトのつり具部分 | 身体に適合するもので、移動用リフトに連結可能なもの |
*上手な介護サービスの活用が介護への負担や時間の軽減につながります。ぜひ自宅の環境改善につなげてほしいと思います。それが、介護離職者を減らすことにつながっていきます。
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