高齢者住まいアドバイザー検定/見捨てられた老人ホーム問題・職員30人大量退職【解説と対応】

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見捨てられた老人ホーム問題・職員30人大量退職【解説と対応】

2024/10/11

連日ニュースなど下記のニュースが報じられています。

【独自】「とにかく無責任」10日が退去期限“見捨てられた老人ホーム”で最後のランチ…千葉市の施設は次の運営先決定か 足立区議会でも議題に

概略を説明しますと、東京都足立区で2023年10月にオープンしたばかりの住宅型有料老人ホームで、9月30日の給与が未払いとなり、30人もの職員が一斉退職したことで、入居者の方が大変不便を強いられ、移転等を余儀なくされた問題です。

当協会は、問題となっている運営法人と関係等はありませんが、全国のアドバイザーの方や消費者の方から複数、本件について問い合わせを受けたため、このような問題の背景やこのような被害に合わないための対策を解説したいと思いいます。

問題の背景
今回の対象施設は、住宅型有料人ホームとなります。住宅型有料老人ホームとは、 生活支援等のサービスがついた高齢者向けの老人ホームです。介護サービスはあくまで自宅で介護を受けるのと一緒でケアプランを組み、サービスの都度料金が発生する仕組みとなっています。しかし実態としては、介護保険の限度額いっぱいの定額で介護付き有料老人ホームのような都度サービスを提供しているケースが多いというのが現状です。
今回問題となっている施設は、月額利用料(介護を除く居住費・食費の合計)が10万円代前半で利用できるようですので、民間運営の施設としては東京23区であれば最安の部類に入ることになります。
住宅型有料老人ホームの運営は、一般的には入居からの月々の費用と、実際の訪問介護などのサービスに入って、お客様からの原則1割負担、社会保険収入として9割を貰って収入とします。
月額費用の方が安いですので、主な収益源は介護報酬ということになります。ですので、介護保険収入に依存したビジネスモデルとなっていて、低価格のサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームの多くがそうなります。
介護報酬については、入金が2か月後~3か月後になることがありますので、新規の会社であれば、十分な事業資金の確保が必要であり、借入や自己資金でカバーできなければ、今回のような給与の未払いとなってしまいます。
また、今年(2024年4月)に介護保険の改正があり、訪問介護の報酬の引き下げがありました。

【2024年度改定対応】訪問介護の同一建物減算(集合住宅減算)とは?

介護保険収入に依存しているビジネスモデルのため、このような減算が大きく影響したと思われます。ですので、4月以降で徐々に資金繰りが悪くなったのだと思います。
施設の場合は、入居率や平均介護度など色々な要因がありますが、今回はこの報酬改定が大きな原因だったと推測され、ただでさえギリギリの経営だったところがこれで耐え切れなくなったのかと思います。
今回のような事態は氷山の一角であり、今後増えてくる可能性がありますので、しっかりとした対策などを考える必要があります。

対策
以下のようなケースに注意が必要です。

①他業種からの新規参入業者
介護の経験のない会社が、補助金などを理由に新規に参入して運営を始めるケースがあります。
そういった施設が悪いというわけではありませんが、ノウハウなどない会社の場合は経営がうまくいかない可能性がありますので、十分聞き込みをして大丈夫という心象を得る必要があります。

②新規オープン施設なのに入居率の低い施設
入居率が悪いということは、経営状況があまりよくないという指標になります。このような場合は、適切な理由があれば問題ありませんが、理由がなく低入居率の場合は注意が必要です。

③介護保険に依存したビジネスモデルの施設
民間の安い高齢者施設はほとんどこれに該当するので回避するのは難しいですが、このような施設に入居する場合は、前項でみた2項目をしっかり確認することが大事かと思います。

記事制作:高齢者住まいアドバイザー協会 代表理事 満田将太

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